同期が部下になった時の地獄〜「昔は良かった」おじさんとの向き合い方〜

マネジメント術

1. 「あいつ、どうにかしてくださいよ」と若手に言われた日

「部長、Aさん今日も機嫌悪いっすね…」。ある日、若手がそっと耳打ちしてきた。Aは私の同期。昔は一緒に飲み歩いて、案件で苦しんだ時に支え合った仲だ。組織が変わって今は私の部下になった。彼も頑張っていないわけじゃない。でも口を開けば「俺たちの時代はもっと厳しかった」「最近の若手はぬるい」。成績は中の下。笑いながら仕事をしている若手の方が、はるかに数字を上げている。正直、私も腫れ物に触るように扱っていた。触らぬ神に祟りなし。向き合うのが、面倒くさかったのだ。

2. なぜ「昔は良かったおじさん」が生まれるのか

これは私の経験上、本人の性格の問題というより「自信を失った人間の防衛反応」だ。

かつて自分が誇っていたやり方が通用しなくなり、後輩のほうが成果を出している。その現実を直視するのが怖いから、「時代が悪い」「若手がぬるい」と外側に原因を求める。本当は誰よりも自分自身に苛立っているのだ。

そして厄介なのは、私のような同期マネージャーが「昔の関係性」に引きずられて、本気で向き合えないこと。気を遣って腫れ物扱いした結果、彼のプライドはさらに傷つき、若手との溝も深まる。マネージャーの遠慮こそが、チームの輪を壊す最大の原因になっていることに、私は気づいていなかった。

3. 同期の部下と向き合うための5つの実践

① 「同期」の鎧を脱がせる場を作る

飲み会ではなく、就業時間内に1on1を入れる。「同期だけど、今は上司として話したい」と最初に宣言する。これを言わないと、いつまでも昔の関係性のまま会話が滑っていく。最初の30秒のセリフで全てが決まる。

② 「人格」ではなく「行動」で話す

「お前、最近態度悪いぞ」はNG。「昨日のミーティングで、Bくんの提案に対して『そんなの昔やった』と言ったよね。あれでチームの空気が止まった」と、行動と影響をセットで伝える。事実ベースで話せば、同期相手でも逃げ場がない。

③ プライドを守りながら役割を再定義する

彼の経験は本物だ。「若手指導役」や「難案件のクロージング担当」など、過去の経験が活きる役割を明確に渡す。「お前にしか頼めない」という言葉は、機嫌で態度を変える人ほど効く。

④ 若手の前で公平に叱る・褒める

遠慮して同期だけ甘くしていると、若手は「あの人は特別扱い」と冷める。私は腹をくくって、ミーティングで彼にも普通に指摘するようにした。最初は気まずかったが、若手の目が明らかに変わった。

⑤ ダメな時は「同期として」一度だけ本音をぶつける

業務の枠を超えて、一度だけ正面から言う。「お前、このままだとチームに居場所なくなるぞ。同期として言ってる」。これは多用してはいけない切り札だが、本気の一言は人を動かす。

こうした関わり方の根っこにあるのは「傾聴」だ。説教する前に、彼が今何に苛立っているのかを聴く時間を、私は完全にサボっていた。

4. 同期マネジメントに効いた一冊

同期や年上部下とのマネジメントに悩んでいるなら、『人を動かす傾聴力』を一読してほしい。命令や説得ではなく、相手の本音を引き出すための具体的な聴き方が書かれている。私自身、この本を読んでから1on1で「で、本当はどう思ってる?」の一言が言えるようになり、同期との距離が一気に縮まった。

もう一冊、ベタだが『人を動かす』はこのテーマの王道。プライドが高く扱いづらい相手にどう接するか、何度読み返してもヒントがある。

こうしたマネジメント本をまとめて読むならKindle Unlimited(読み放題)が圧倒的にコスパがいい。月1冊読めば元が取れる。

5. まとめ:遠慮はマネジメントではない

同期だから、昔仲良かったから、と気を遣うのは優しさじゃなく逃げだ。彼の不機嫌に振り回されているうちに、頑張っている若手のモチベーションが削られていく。マネージャーの仕事は、誰か一人に気を遣うことじゃなく、チーム全体が前に進める空気を作ることだ。

私はあの日、覚悟を決めて彼と向き合った。一発で関係が良くなったわけじゃない。でも少なくとも、若手は「ちゃんと見てくれてる」と感じてくれた。同期の部下と向き合うのは、間違いなく面倒くさい。でも、その面倒くささから逃げないことが、マネージャーの仕事そのものなのだと思う。

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