「優しいだけのリーダー」を降格させた理由|優しさは正義ではない

マネジメント術

先日、ある決断をしました。チーム内で最も人望があり、誰からも慕われていた年上のリーダーを、役職から外したのです。

彼はとにかく優しい人でした。経験も豊富で、聞かれれば的確にアドバイスできる。部下の愚痴や不満を1時間でも2時間でも聞いてあげる。正直、私自身も何度も助けられました。それでも、彼をリーダーから外す決断をしたのです。

「優しさ」が組織を停滞させていた

彼のもとに相談に来るメンバーを観察していて、あることに気づきました。

彼に相談するスタッフたちは、いつも同じような愚痴を繰り返している。「あの案件がうまくいかない」「あのお客さんが難しい」「会社の方針が納得できない」。話を聞いてもらって、その場はスッキリする。でも、翌週また同じ話をしている。

つまり、何も変わっていないのです。

彼の「優しさ」は、メンバーの成長を促すものではなく、現状を肯定するだけのものになっていました。話を聞いてもらえるから、自分で考えなくなる。共感してもらえるから、行動を変えなくなる。

そして気づいたのは、彼自身も成長しようとしていないということでした。自分の目標にコミットせず、ただ「いい人」でいることに安住していた。結果として、彼は「ダメなスタッフの防波堤」のような存在になっていたのです。

リーダーに必要なのは「優しさ」ではなく「厳しさを持った愛情」

なぜこうなってしまうのか。私なりに原因を考えました。

まず、「聞いてあげること」と「導くこと」は違うということ。話を聞くのは大切です。でも、それだけでは人は変わらない。「で、どうする?」という問いかけがなければ、ただのガス抜きで終わってしまう。

次に、「嫌われたくない」という気持ちが判断を曇らせること。彼は誰からも好かれていました。でもそれは、誰にも厳しいことを言わなかったから。耳の痛いフィードバックを避け続けた結果、みんなから慕われる「いい先輩」にはなれても、成果を出せるリーダーにはなれなかった。

そして、リーダー自身が目標にコミットしていないと、部下もコミットしないということ。「まあ、なんとかなるでしょ」という空気は伝染します。彼のチームは、どこか緊張感がなかった。それは彼自身の姿勢が反映されていたのです。

「優しいだけのリーダー」を防ぐための3つのポイント

1. 「聞く」だけで終わらせない仕組みをつくる

相談を受けたら、必ず「で、次にどうする?」を確認するルールを設けましょう。私のチームでは、相談の最後に「明日から何をするか」を一つ決めてから終わるようにしています。話を聞いて共感するだけでなく、次のアクションまで落とし込む。これだけで、相談の質が大きく変わります。

2. リーダー自身の目標を「見える化」する

リーダーが何を目指しているのかをチームに公開する。私は各リーダーに、自分の目標と進捗を週次で共有してもらっています。リーダー自身が目標に向かって努力している姿を見せることで、チーム全体に「達成するのが当たり前」という空気が生まれます。逆に、リーダーが目標を曖昧にしていると、メンバーも「まあいいか」となってしまう。

3. 「厳しいことを言えているか」を評価項目に入れる

リーダーの評価に「適切なフィードバックができているか」を入れてください。私は四半期ごとに、各リーダーがメンバーにどんなフィードバックをしたかをヒアリングしています。「最近、誰かに耳の痛いことを伝えた?」と聞くだけでも効果があります。嫌われたくないから言わない、ではリーダー失格。愛情があるから言う、という文化を作る必要があります。

おすすめの書籍

この件を経験してから、改めて読み返した本があります。

『新1分間マネジャー』は、「褒める」と「叱る」のバランスについてシンプルに教えてくれる一冊です。優しいだけでは人は育たない。かといって厳しいだけでもダメ。この本を読むと、リーダーとして何をすべきかが明確になります。特に「1分間叱責」の考え方は、優しさと厳しさの両立を考える上で参考になるはずです。

もう一冊、『マネジャーの最も大切な仕事』もおすすめです。部下の「小さな前進」を支援することの大切さが書かれています。話を聞くだけでなく、進捗を促し、前に進ませる。それがリーダーの仕事だと改めて気づかせてくれます。

まとめ

優しさは、決して悪いものではありません。でも、優しさだけでは人も組織も成長しない。

今回リーダーを外した彼には、正直に理由を伝えました。「あなたの優しさは本物だ。でも、それだけでは部下を成長させられない。まずは自分自身が目標に向かって挑戦する姿を見せてほしい」と。

彼は最初、納得していない様子でした。でも半年経った今、少しずつ変わり始めています。自分の数字に向き合い、後輩にも「それで、どうする?」と聞くようになった。

リーダーに必要なのは、「好かれる優しさ」ではなく、「成長させる厳しさを持った愛情」。私自身も、この経験から学ばせてもらいました。

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