成績最下位なのに自己評価S。査定面談で見えた「真面目に勘違いしている部下」との向き合い方

マネジメント術

1. 査定面談で唖然とした話

先日、賞与査定の面談で久しぶりに頭を抱えた。相手は営業成績がチーム最下位のスタッフ。こちらとしては「今期の振り返りをしつつ、何が足りなかったかを一緒に整理しよう」というつもりだった。ところが、彼から提出された自己評価シートを見て言葉を失った。自己評価はオールS。各項目には、まるでトップセールスが書いたかのような立派なコメントが並んでいた。

「業務時間を短縮し、その分を顧客満足度向上と提案活動に充てた」「メンバーの効率化に働きかけ、チーム全体の成果につなげた」——ぱっと見は素晴らしい。しかし現実は、新規はほぼゼロ、既存顧客からの評判も芳しくない。一つひとつ深掘りして聞くと、中身がスカスカ。「これでは高評価はつけられない」と伝えると、彼は言った。「じゃあ、努力しても意味がないってことですか?」

2. なぜこういう部下が生まれるのか

怖いのは、彼が嘘をついているわけじゃないということだ。本人は至って真面目。本気で「自分は頑張った」と思っている。なぜこんなことが起きるのか。私の経験上、原因はだいたい次の3つに集約される。

① 「行動量」と「成果」の区別がついていない

「動いた=成果」と勘違いしているパターン。資料を作った、電話をかけた、会議に出た——その行為自体を成果だと思い込んでいる。本来、営業の成果は数字でしか測れないのに、プロセスの自己満足で完結してしまっている。

② 自分を客観視するモノサシがない

トップ営業が何をどれくらいやっているのか、その水準を知らない。だから「自分基準」で「頑張った」と判断してしまう。比較対象が過去の自分しかないと、ちょっと動いただけで「すごく頑張った」になる。

③ マネジャー側のフィードバック不足

これは耳が痛い話だが、上司側の責任も大きい。日々の中で「それは成果につながる動きじゃない」と都度伝えていれば、ここまでズレた自己認識にはならない。期末にまとめて指摘するから、本人は驚き、反発する。

3. このタイプの部下への対処法

① 「事実」と「解釈」を分けて聞く

「顧客満足度を上げた」と書いてあったら、「具体的にどの顧客の、何の指標が、どれくらい上がった?」と聞く。事実ベースで質問していくと、本人も「あ、語れない」と気づく。怒らず、淡々と事実を確認していくのがコツだ。

② 成果の定義を最初にすり合わせる

期初の目標設定の段階で、「何をもって成果と呼ぶか」を明文化しておく。新規○件、受注○円、リピート率○%——数字で握っておけば、期末に「頑張ったのに」という議論にならない。

③ 月次で小さくフィードバックする

半年や一年に一回の面談ではズレが大きくなりすぎる。月次の1on1で「今月の動きはここが弱かった」と短く伝え続ける。痛みを小分けにする感覚だ。

④ トップ営業の動きを「見せる」

本人が「頑張りの基準」を知らないなら、見せるしかない。同行させる、ロープレに入れる、商談録音を聞かせる。「これがウチのスタンダードだ」と体感させる。

⑤ 「努力は否定しない、方向性を直す」と伝える

「努力に意味がないんですか?」と言われたとき、絶対に「意味ない」とは言わない。「努力は認めている。ただ、向いている方向がズレている。だから成果につながらない」と伝える。本人の人格や姿勢を否定すると、心を閉ざして終わりだ。

4. おすすめ書籍

こういう「真面目にズレている部下」と向き合うとき、私が読み返している本を紹介したい。

『人を動かす傾聴力』は、まさにこういう面談で役立つ一冊。本人の話を遮らず、事実を引き出す質問の仕方が学べる。一方的に詰めるのではなく、本人に気づかせる対話のコツが詰まっている。1on1で空回りしているマネジャーには特におすすめだ。

もう一冊、『マネジャーの最も大切な仕事』も外せない。部下の「進捗」を日々どう捉えてフィードバックすべきか、内的モチベーションをどう刺激するかが具体的に書かれている。期末にまとめて指摘して揉める、という事態を防ぐためのヒントが詰まっている。

こうしたマネジメント本は何冊も読んで自分なりの型を作るのが一番だ。私はKindle Unlimited(読み放題)でマネジメント本を片っ端から読んで、現場で使えそうなフレーズを盗んでいる。月額固定で読み放題なので、コスパは抜群だ。

5. まとめ

「真面目にズレている部下」は、サボっている部下より厄介だ。本人に悪気がないからこそ、指摘すれば反発する。だが、放置すれば本人のキャリアにも組織にも害になる。

大事なのは、期末ではなく日常の中でズレを少しずつ修正していくこと。そして、努力そのものは認めつつ、方向性を一緒に直してあげること。マネジャーの仕事は、部下に正しい現実を見せることでもある。耳の痛い話だが、それを言える上司こそ、本当に部下のためになる上司だと私は思っている。

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