「あの子、仕事は本当にできるんだよな……」
私がマネージャーになって3年目のとき、まさにこの悩みを抱えていました。担当している部下の一人は、責任感が強く、トラブルの予兆を察知すると「土日に半分だけ作業してもいいですか?」と自ら申し出てくる。実際、彼女のおかげで大きな問題を何度も未然に防いでくれました。
でも、彼女は毎朝、始業時刻ぴったりに会社に来るんです。「ぴったりに仕事を始める」のではありません。朝礼には参加せず、ロッカーで身支度を整え、朝礼が終わった頃にようやく席に現れる。そして朝食を食べながら業務を開始する。
正直、モヤモヤしました。「注意すべきなのか?でも仕事はできてるし……」と。
なぜこの状況がマネージャーを悩ませるのか
この手の問題が厄介なのは、「成果」と「規律」のどちらを優先すべきかという答えのない問いを突きつけてくるからです。
彼女の仕事ぶりは申し分ない。むしろチームの中でもトップクラス。でも、朝礼に出ない、始業時刻に席にいない、朝食を食べながら仕事を始める。これを放置すれば、他のメンバーから「あの人はいいんですか?」という不満が出るかもしれない。
一方で、強く注意すれば「成果を出してるのに、なぜ細かいことを言われるのか」と彼女のモチベーションが下がる可能性もある。最悪、退職されたらチームは大打撃です。
さらに厄介なのは、マネージャー自身の価値観が揺らぐこと。「自分は始業15分前には席についていた」「朝礼は当然参加するもの」という感覚があると、それを守らない部下に対して感情的になりやすい。でも、その感覚が本当に正しいのか?時代遅れではないのか?という疑問も湧いてきます。
具体的な対処法
1. まず「何が問題なのか」を整理する
注意する前に、冷静に整理してみてください。
- 業務に支障は出ているか?(納期遅延、顧客対応の問題など)
- 他のメンバーに実害が出ているか?(朝礼での情報共有漏れなど)
- 会社のルールとして明確に違反しているか?
私の場合、よく考えてみると「業務上の実害はほぼなかった」んです。朝礼の内容は後から共有すれば済むし、始業直後に彼女が必要な場面はほとんどなかった。つまり、私が感じていた不快感は「自分の常識との乖離」から来ていたんですね。
2. 「許容できるライン」を自分の中で決める
すべてを注意する必要はありません。でも、すべてを許容する必要もありません。
私が引いたラインは「チーム全体の士気に影響するかどうか」でした。朝礼に出ないことは、正直そこまで影響がなかった。でも「朝食を食べながら仕事をする」のは、他のメンバーの目に入る。これは少し気になりました。
だから私は、朝礼への参加は強制しなかったけれど、「席に着いたらすぐに業務モードに入ってほしい」とだけ伝えました。
3. 伝えるなら「成果を認めた上で」伝える
ここがすごく大事です。
仕事ができる部下ほど、「自分は成果を出している」という自負があります。そこにいきなり「朝礼に出なさい」と言うと、「なんで自分だけ?」と反発を招く。
私はこう伝えました。
「〇〇さんのおかげで、先月の件も大事に至らなかった。本当に助かってる。ただ一つだけお願いがあって、朝、席についたらなるべく早く仕事モードに入ってもらえると、周りのメンバーも安心すると思うんだ」
成果への感謝 → お願い → チームへの影響という順番です。「あなたがダメ」ではなく、「チームのためにこうしてほしい」という伝え方にすると、受け入れてもらいやすくなります。
4. 朝礼の「価値」を見直す
そもそも、朝礼って本当に必要ですか?
私もこの件をきっかけに朝礼の内容を見直しました。実は、惰性でやっていた部分も多かった。連絡事項はチャットで済むし、モチベーション向上のための時間になっているかというと微妙だった。
結果的に、朝礼の時間を短縮し、週1回のチームミーティングに情報共有を集約しました。彼女だけでなく、他のメンバーからも「助かります」という声が上がりました。
部下の行動を変えさせるのではなく、仕組みのほうを変えるという選択肢もあるんです。
5. 最終的には「チーム全体」で判断する
この手の問題は、「個人の行動」ではなく「チームへの影響」で判断するのが鉄則です。
他のメンバーが「あの人だけズルい」と感じているなら、それは対処が必要です。でも、誰も気にしていないなら、マネージャーが一人で悩む必要はありません。
私の場合、何人かのメンバーにそれとなく聞いてみたところ、「まあ、あの人は仕事できるから」という反応でした。不満を持っている人は意外と少なかった。自分が思っているほど、問題になっていないケースも多いんです。
おすすめ書籍の紹介
このテーマに関連して、一冊おすすめしたい本があります。
『新1分間マネジャー』は、部下への伝え方・褒め方・注意の仕方をシンプルに学べる一冊です。「成果を出している部下にどう接するか」「注意するときの心構え」など、まさに今回のようなケースで役立つ考え方が詰まっています。短時間で読めるので、忙しいマネージャーにもおすすめです。
まとめ
仕事ができる部下の「ちょっとした行動」にどう対処するか。これはマネージャーなら誰もが経験する悩みだと思います。
大事なのは、感情的にならず、「実害があるかどうか」を冷静に見極めることです。
- 業務に支障がないなら、許容できる範囲を自分で決める
- 伝えるなら、成果を認めた上で「お願い」として伝える
- 仕組み自体を見直す選択肢も持っておく
- チーム全体への影響を基準に判断する
完璧な部下なんていません。そして、完璧なマネージャーもいません。お互いに折り合いをつけながら、成果を出せるチームを作っていく。それがマネジメントの現実なんだと、私は思っています。


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