先日、部内の別チームが急遽人員不足になり、ヘルプで仕事を手伝うことになった。普段触らないシステムで作業をしていたら、案の定ミスをしてしまった。「すみません」と謝りつつ、冷静にミスの原因を見直してみると、あることに気づいた。これ、ミスしやすいシステムじゃないか?と。毎回手動で項目を修正しなければならず、ミスが起こりやすいだけでなく、仮にミスがなくても単純に面倒くさい。システムを少し変えれば解決するのでは?と思った私は、チームで社歴が長いスタッフに聞いてみた。「他のスタッフもミスすることあります?」と。
返ってきた謎の回答
そこで返ってきた言葉に、私は耳を疑った。
「ミスはしてはいけないのです」
いや、そうじゃなくて。私は自分のミスを詫びつつ、「このシステム、手間がかかってませんか?」と聞き直した。すると、
「ですから、ミスをしやすいとかしにくいではなく、ミスはしてはいけないのです」
まったく要領を得ない。仕方なく、少し強めの口調で「ミスはあるのか、ないのか。二択で答えてください」と言った。すると、
「ミスはあります。しかし、システム部に修正を依頼して迷惑をかけるのは、プライドが許せません」
……何を言っているのか、正直わからなかった。
なぜこんな思考になるのか
この会話、実は営業現場でもよく見かける構造的な問題を含んでいる。原因を整理してみよう。
1. 「改善=自分たちの否定」と捉えている
長年そのやり方でやってきたスタッフにとって、「このシステムはおかしい」という指摘は、「今までの自分たちの仕事を否定された」と感じてしまう。だから、問題があることを認めたくない。認めると、今までの苦労が無駄だったことになるからだ。
2. 「他部署に頼む=負け」という謎のプライド
「システム部に迷惑をかけたくない」という発言の裏には、「自分たちで何とかするのが正しい」という歪んだプライドがある。本来、効率化のためにシステム部門は存在するのに、依頼すること自体を「恥」と捉えてしまっている。
3. 思考停止が習慣化している
「ミスはしてはいけない」という言葉は、一見正論に聞こえる。しかし、これは「どうすればミスを減らせるか」を考えることを放棄している状態だ。「気をつける」「頑張る」で乗り切ろうとする精神論に陥っている。
こういう状況にどう対処するか
外から入ったヘルプの立場で、いきなり「システム変えましょう」と言っても反発されるだけ。私が実際にやったアプローチを紹介する。
対処法1:まず「困っていること」を言語化してもらう
「このシステムおかしいですよね?」と聞くと、相手は防御姿勢に入る。そうではなく、「この作業で一番手間がかかるところってどこですか?」と聞く。すると、「毎回この項目を直すのが面倒で……」という本音が出てくる。困っていることを自分の口で言ってもらうのがポイントだ。
対処法2:数字で客観的に見せる
「ミスは起こる」という事実を、感情ではなく数字で示す。「先月この作業でミスが何件あったか、ちょっと数えてみませんか?」と提案する。数字が出ると、「気をつければ大丈夫」という精神論が通用しなくなる。
対処法3:「あなたのせいじゃない」と伝える
長年やってきた人にとって、改善提案は自己否定に聞こえる。だから、「このシステムがそもそも使いにくいんですよ。皆さんが悪いわけじゃない」と明確に伝える。敵は「人」ではなく「仕組み」だとわかれば、改善に前向きになれる。
対処法4:小さな改善から始める
いきなり「システム全体を変えましょう」と言うと、ハードルが高すぎる。まずは「この項目だけ初期値を変えてもらえないか、システム部に聞いてみましょうか?」と、小さな一歩を提案する。小さな成功体験が積み重なると、「改善って悪くないな」と思ってもらえる。
対処法5:上司として「改善は正義」という空気を作る
チームの文化として、「困っていることを声に出すのは良いこと」「改善提案は歓迎」という空気を作ることが大事だ。日頃から「何か困ってることない?」「もっとラクにできる方法ないかな?」と声をかけ続けることで、思考停止を防げる。
おすすめ書籍
この手の「現場の思考停止」や「改善が進まない組織」の問題に悩んでいるなら、『問題解決』を読んでほしい。なぜ問題が放置されるのか、どうすれば根本原因を特定できるのかが論理的に整理されている。「気をつける」ではなく「仕組みで解決する」という思考が身につく一冊だ。
また、チーム全体が自分で考えて動けるようになるには、『自走するチームの作り方』もおすすめ。メンバーが「言われたことだけやる」状態から脱却し、自ら改善を提案できるチームを作るヒントが詰まっている。
まとめ
「ミスはしてはいけないのです」という言葉の裏には、改善を放棄した思考停止が隠れていた。長年同じやり方でやってきた人にとって、「変える」ことは怖いし、自己否定にも感じる。だからこそ、外から入った人間や上司は、「あなたのせいじゃない。仕組みの問題だ」と伝えることが大事だ。
そして、改善は一度きりのイベントではなく、日々の習慣にしていくもの。「困ったことを言えるチーム」「小さな改善を歓迎するチーム」を作っていこう。ミスを責めるのではなく、ミスが起きにくい仕組みを一緒に考える。それがマネージャーの仕事だと、改めて感じた出来事だった。


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