ある本を読んで、ふと立ち止まった
先日、マネジメント系の本を読んでいてこんな一節に出会った。「役職を上げるのは、優しく、弱い立場のことを考えられる人にしなければならない」と。なるほど、確かに正論だ。理想論としては100点満点。でも、現場で20年以上マネジメントをやってきた立場から言わせてもらうと、これだけでは足りない。むしろ、優しさだけを基準に役職を与えると、組織は静かに崩れていく。今日はそんな話をしたい。
なぜ「優しいだけのリーダー」では組織が回らないのか
長年現場を見てきて気づいたのは、「優しい人」と「自分に厳しい人」はあまり重ならないという事実だ。優しく、弱い立場の気持ちがわかる人は、確かに人間として素晴らしい。だが、その優しさは多くの場合、自分自身にも向く。つまり「自分にも甘い」のだ。
自分に甘い人間が上に立つとどうなるか。約束した数字に対して言い訳が増える。部下のミスにも「まあ仕方ないよね」で済ませる。結果、チーム全体が緩み、達成意欲のあるメンバーから不満が噴き出す。「うちの部長、いい人なんだけどね…」という言葉ほど、リーダーにとって致命的な評価はない。
本当に必要なのは、弱者の気持ちがわかり、かつ自分を律することができ、チームの成長のために時に厳しいことを言える人間だ。だが、こんな人間は本当に稀有である。10人に1人いればいいほうだろう。
では、現実的にどう対処するか
理想の人材がいないなら、どうすればいいのか。私が現場でやってきた具体的な対処法を5つ紹介する。
1. 「優しさ」と「甘さ」を分けて評価する
昇格人事のとき、私は必ず「この人は部下に厳しいフィードバックができるか」を見る。優しいだけで叱れない人は課長止まり。叱れるけど思いやりがない人も同様。両方持っている人だけが部長候補になる。「優しい=昇格」という単純な図式は捨てるべきだ。
2. 自分を律する仕組みを持っているか確認する
自分に甘い人間は、必ず行動に表れる。遅刻、提出物の遅れ、自分の数字への詰めの甘さ。逆に、自分のルーティンや目標管理を徹底している人は、まず間違いなく自律できている。昇格候補者は、業務スキルだけでなく「自己管理能力」を必ず見るべきだ。
3. 役職を与える前に「厳しい場面」を経験させる
いきなり管理職にせず、サブリーダーや小さなプロジェクトリーダーを任せて、メンバーに厳しいことを言わせてみる。ここで逃げるか、向き合うかで本性が見える。私は昇格前に必ず「言いにくいことを言う場面」を意図的に作る。
4. 「優しさ」は後天的に伸ばせないが、「厳しさ」は訓練できる
これは経験則だが、人への思いやりや弱者への共感は、性格に近く、大人になってから身につけるのは難しい。一方、「厳しいフィードバックをする力」は訓練で伸びる。だから採用・昇格時には「優しさベース」で選び、「厳しさ」を後から鍛える方が効率がいい。
5. 完璧な人間を求めず、補完するチームを作る
結局、すべてを兼ね備えた人間はほぼいない。だから、優しいリーダーには厳しいナンバー2をつける。逆も然り。チームで補完する設計こそが、現実的な解だ。
こうした「人を見る目」を磨くのは一朝一夕にはいかない。私自身、昔の失敗から学んできたが、本から学べることも多い。最近はKindle Unlimited(読み放題)でマネジメント本を片っ端から読み漁っている。月1000円ちょっとで、複数の視点が手に入るのはコスパが良すぎる。
おすすめ書籍の紹介
このテーマで実際に役立った本を2冊紹介したい。
『プロフェッショナルマネジャー』は、ユニクロの柳井正氏が「人生最高の経営参考書」と評した一冊。優しさだけでは組織は動かない、結果を出すマネジャーとは何かを徹底的に教えてくれる。「役職者の覚悟」を考えさせられる本で、自分に甘くなりそうなときに何度も読み返している。
もう一冊は『新1分間マネジャー』。優しさと厳しさのバランスをどう取るかを、シンプルかつ実践的に教えてくれる。特に「叱る」場面の具体的な型は、優しすぎる管理職にこそ読んでほしい内容だ。短時間で読めるので、忙しいマネージャーに最適。
まとめ
「優しく弱い立場のことを考えられる人」を役職に上げるべき、という主張は半分正解で半分不足している。本当に必要なのは、それに加えて「自分を律し、チームのために厳しいことが言える」資質だ。だが、こんな人材は皆無に等しい。
だからこそ、我々マネージャーがやるべきは、完璧な人材を待つことではなく、人を見る目を磨き、足りない部分を補完するチーム設計をし、自分自身も常に「自分に甘くなっていないか」と問い続けることだ。優しさは大切だ。だが、それと同じくらい「自分に厳しくあること」が、上に立つ者の責任だと私は思う。


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