1時間説教する部下、撤回した『提案禁止令』
正直、頭を抱えた事案だった。うちのチームに、後輩に1時間以上説教する部下がいる。仕事はそこそこできる。だが、自分のスキルを上げる努力はしない。注意しても「自分はこの性格なんで」で終わり。極めつけは、ある後輩が結果を出した直後、陰でこう言い放っていたことだ。「お前はミスが多い。お客様に迷惑がかかるから、ミスがなくなるまで新規提案は禁止」。後輩は潰れる寸前。私はその場で撤回させた。今日はこの話を書く。
なぜ「正論モンスター」が生まれるのか
彼の口グセは決まっている。「お客様がかわいそう」「後輩のため」。一見、他者を思った発言だ。だが現場で何年もマネジメントをやってきた私にはわかる。あれは他者のためじゃない。自分の基準まで到達しない後輩が、許せないだけだ。
このタイプは、自分の中の「正しさ」を絶対視している。だから他人にも同じ基準を要求する。しかも厄介なのは、自分自身は学び続ける努力をしないこと。基準が古いまま固定化されているから、後輩が新しいやり方で成果を出しても認められない。むしろ「自分の知らない方法で結果が出た」ことが脅威になる。だから引きずり下ろす。後輩の提案を禁止したのは、まさにそれだ。
本人に悪意はない。本気で「正しい」と思っている。だからこそ、たちが悪い。
マネジャーがとるべき5つの対処法
1. 行動と人格を切り離して指摘する
「あなたの性格が問題」と言ってはいけない。本人は性格を盾にする。代わりに「1時間の説教という行動が、後輩のパフォーマンスを下げている」と、事実と影響だけで切り込む。性格論議に持ち込まれた時点で負けだ。
2. 「他者のため」という言い訳を封じる
「お客様のため」「後輩のため」と言われたら、「では、その後輩は今あなたの指導でどう成長していますか?数字と行動で教えてください」と聞く。たいてい答えに詰まる。意図ではなく結果で会話する。これだけで主導権が戻る。
3. 陰の行動を見逃さない
パワハラ気質の部下は、上司の前ではやらない。陰でやる。だからマネジャーは1on1を後輩側にも徹底し、「最近どんな指導を受けたか」を具体的に聞き出す必要がある。私が『提案禁止令』に気づけたのも、後輩との定期面談があったからだ。
4. 越権行為は即撤回させる
「提案禁止」は明らかに越権だ。マネジャーの権限を勝手に行使している。こういう時は遠慮せず即撤回。「指導と人事的判断は別だ。あなたの権限を超えている」とハッキリ伝える。曖昧にすると後輩がまた潰される。
5. 本人にも「変われない理由」を聞く
「自分はこういう性格なんで」と言われたら、「では5年後もこのままでマネジャーになれると思いますか?」と返す。本人のキャリアの話に転換する。多くの場合、本人もうっすら気づいている。気づいていないフリをしているだけだ。
おすすめ書籍
こういう「正論を振りかざすが、自分は変わらない部下」と向き合うとき、私が何度も読み返している本がある。
『人を動かす傾聴力』は、相手の本音を引き出す技術が詰まっている。「お客様のため」という建前の奥にある本音にたどり着くための質問の型が学べる。1on1で空回りしているマネジャーにこそ読んでほしい。
もう一冊、『嫌われる勇気』。これは部下に渡したい本だ。「課題の分離」という考え方が、他人の成長に過剰介入してしまうタイプにはよく効く。後輩の課題は後輩のもの。あなたの仕事ではない、と気づかせてくれる。
こうしたマネジメント書を月に何冊も読みたいなら、Kindle Unlimited(読み放題)はコスパが高い。私も移動中はこれで流し読みしている。
まとめ
パワハラ気質の部下は「悪意がない」分、扱いが難しい。本人は正義のつもりだからだ。だがマネジャーが見逃せば、優秀な後輩が次々に潰れていく。組織のためにも、本人の将来のためにも、行動と影響を事実ベースで突きつけ、越権行為は即止める。これが現場の鉄則だ。優しさは曖昧さじゃない。ハッキリ伝えることが、結局は本人を救う。


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