「大変申し訳ございません」——このフレーズ、悪くないんです。むしろ、ちゃんと謝れる部下は貴重です。
問題は、その後なんですよね。
「ただ、〇〇という事情がありまして…」「実は△△の関係で…」
私のチームにも、仕事の処理能力は高いのに、お客様対応になると必ず言い訳を並べてしまう部下がいました。本人に悪気はない。むしろ「正確に状況を伝えなきゃ」という誠実さからきている。でも、怒っているお客様にとって、それは火に油を注ぐ行為でしかないんです。
なぜ「言い訳」をしてしまうのか
まず理解しておきたいのは、言い訳する部下は「嘘をついている」わけではないということ。
むしろ、事実を正確に伝えようとしているケースがほとんどです。
彼らの頭の中はこうなっています。
- 「誤解されたくない」という防衛本能
- 「自分のせいじゃない」と証明したい気持ち
- 「理由を伝えれば納得してもらえる」という思い込み
特に仕事ができる人ほど、この傾向が強い。普段はミスが少ないからこそ、「今回は自分の責任じゃない」と主張したくなるんです。
でも、お客様が怒っているとき、求めているのは「説明」じゃない。
「この人は私の気持ちをわかってくれている」という安心感なんです。
言い訳グセを直すための具体的アプローチ
1. 「謝罪と説明は別の会話」と教える
私がその部下に最初に伝えたのは、シンプルなルールでした。
「謝るときは、謝ることだけに集中しろ。説明は、相手が落ち着いてから別の話としてしろ」
同じメールの中で「申し訳ございません」と「〇〇という事情で」を書くから、言い訳に見える。だから、まず1通目は謝罪だけ。理由の説明は、相手の怒りが収まってから別途伝える。これだけで印象は大きく変わります。
2. 「お客様が聞きたいこと」を先に書かせる
怒っているお客様が知りたいのは、「なぜ起きたか」より「これからどうなるか」です。
メールの構成を変えるよう指導しました。
NG: 謝罪 → 理由 → 対応策
OK: 謝罪 → 対応策 → (必要なら)補足説明
「申し訳ございません。本件、明日の午前中までに対応いたします」
これだけでいい。理由は聞かれたら答えればいいんです。
3. 実際のメールを一緒に添削する
口で説明するより、実例で見せるのが一番効きます。
部下が送ろうとしているメールを見せてもらい、「この一文、お客様が読んだらどう感じる?」と問いかける。自分で気づかせるのがポイントです。
「この『ただ』って言葉、なくても伝わるよね?」
「この理由の部分、お客様は知りたいと思う?」
最初は時間がかかりますが、3〜4回繰り返すと、自分で気づけるようになります。
4. ロールプレイで「言い訳された側の気持ち」を体験させる
私がお客様役になって、わざと言い訳されるシーンを再現しました。
部下には私に謝罪してもらう。そのとき、彼がいつもやるように理由を並べてもらう。
終わった後、「どう感じた?」と聞いたら、「…確かにモヤモヤしますね」と。
頭で理解するより、体感するほうが早いんです。
5. 「言い訳じゃない説明」の言い方を教える
とはいえ、本当に伝えるべき事情もあります。
その場合は、「言い訳に聞こえない伝え方」を教えます。
NG:「システム障害があったため対応が遅れました」
OK:「お待たせして申し訳ございません。現在、復旧作業を進めており、〇時までにはご報告いたします」
主語を「自分の事情」から「相手へのアクション」に変える。これだけで、同じ内容でも印象がまったく違います。
おすすめの書籍
言い訳グセの根っこにあるのは、「自分を守りたい」という気持ちです。でも、それが強すぎると、かえって自分の評価を下げてしまう。この矛盾を乗り越えるには、自分の弱さを認める勇気が必要です。『嫌われる勇気』は、「他者からどう見られるか」に縛られず、自分の課題に集中することの大切さを教えてくれます。部下本人に読ませるのもいいですし、マネージャーとして「なぜ部下は言い訳するのか」を理解するためにも役立つ一冊です。
また、説明の仕方そのものを改善したいなら、『きちんと伝わる説明の型とコツ』がおすすめ。お客様への報告やメールの書き方に自信がない部下に、具体的な「型」を教えてあげられます。
まとめ
言い訳してしまう部下は、決して不誠実なわけではありません。むしろ、「正しく伝えたい」「誤解されたくない」という気持ちが強いからこそ、余計な説明をしてしまうんです。
大事なのは、「言い訳するな」と叱ることではなく、「相手が求めていることは何か」を考える視点を持たせること。
謝罪と説明は分ける。対応策を先に伝える。言い訳に聞こえない言い方を練習する。
これを根気強く繰り返せば、仕事ができる部下は必ず変わります。
お客様対応がうまくなれば、その部下はもっと信頼されるようになる。それは本人にとっても、チームにとっても、大きな財産になりますよ。


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