1. 「なんで俺じゃなくてアイツなんすか?」
去年のことだ。入社3年目の若手A君が、コツコツと泥臭い営業を続けていた。一時の頑張りじゃない。毎日、毎週、毎月、地味な行動を積み上げていた。俺はその姿を見て、評価を一段上げた。するとどうなったか。後輩たちが「A先輩みたいにやれば評価されるんだ」と動き始め、チーム全体の数字が跳ね上がった。ところがだ。喜んだのも束の間、今度は先輩スタッフから愚痴が出始めた。「あんな若手を上げるなんて」「俺のほうが長くやってるのに」——さて、あなたが部長ならどうする?
2. なぜ先輩から愚痴が出るのか
正直に言う。先輩の愚痴は「嫉妬」じゃない。もっと根深い。「自分の立ち位置が脅かされる不安」なんだ。
先輩スタッフからすれば、これまで年次や経験で守られていた序列が崩れる瞬間だ。若手が評価されることは、自分の相対的価値が下がることを意味する。しかも厄介なのは、本人たちもそれを頭では理解していること。だから表立って反対できず、愚痴というカタチで漏れ出る。
ここで部長がやっちゃいけないのは、先輩に気を遣って若手の評価を下げることだ。それをやった瞬間、頑張った若手は辞める。後輩たちも「この会社は年功序列か」と冷める。組織は一気に腐る。
3. 若手を評価しつつ、先輩も腐らせない5つの打ち手
① 若手の評価基準を「透明化」する
「なぜA君が評価されたのか」を全員の前で言語化する。行動量、継続性、数字、後輩への影響——具体的に示せば、先輩も「文句を言う前に自分がやればいい」と腹落ちする。評価の不透明さが愚痴を生む最大の原因だ。
② 先輩には「先輩にしかできない役割」を与える
若手と同じ土俵で勝負させるから苦しくなる。先輩には「後輩育成」「大口顧客のリレーション」「若手が踏めない難所の突破」など、経験値が武器になる役割を明確に渡す。役割が違えば、評価軸も変わる。
③ 1on1で「本音」を吸い上げる
愚痴は放置すると膿む。俺は先輩スタッフとの1on1を増やし、「どう感じてる?」とストレートに聞く。最初は建前しか出てこないが、3回、4回と続けると本音が出る。そこからが始まりだ。
④ 過去の功績を「言葉にして」認める
先輩が欲しいのは昇給だけじゃない。「あなたがいたから今がある」という承認だ。朝礼、会議、飲み会——どこでもいい。過去の実績を具体的に語って、公の場で認める。これだけで空気は変わる。
⑤ それでも腐る先輩には、線を引く
残酷だが事実を言う。打ち手を尽くしても愚痴を撒き散らし、チームの足を引っ張る先輩はいる。そのときは線を引かなきゃいけない。評価は下げる。役割も変える。組織を守るのが部長の仕事だ。
4. この局面で俺が読み返した本
先輩スタッフのマネジメントに悩んだとき、俺が読み返したのがこの2冊だ。
『人を動かす傾聴力』——愚痴を言う先輩と向き合うとき、こちらが「説得」しようとするほど関係は悪くなる。まず聴く。徹底的に聴く。1on1で本音を引き出すための具体的な技術が詰まっていて、現場で即使える一冊だ。
『自走するチームの作り方』——若手も先輩も、それぞれが自分の役割で動けるチームをどう作るか。年次に関係なく、一人ひとりが成果にコミットする組織の設計図が学べる。愚痴が出ない組織は、役割が明確な組織だと痛感させられた。
営業マネジメントの本は読み切るまで時間がかかるから、俺はKindle Unlimited(読み放題)でまず試し読みして、刺さったものだけじっくり読むようにしている。月1冊読めば元が取れる。
5. まとめ:部長の本当の仕事
成果を出す若手を評価する。これは絶対だ。ここでブレたら組織は終わる。
でも、評価して終わりじゃない。部長の本当の仕事は、先輩スタッフをどう再び成長軌道に乗せるかを考えることだ。若手を引き上げるのは、ある意味カンタン。難しいのは、プライドも経験もある先輩スタッフのエンジンに、もう一度火をつけることだ。
若手の評価は「エサ」じゃない。先輩にとっての「鏡」であるべきだ。その鏡を見て、先輩が「俺ももう一度やるか」と思える空気を作れるかどうか。そこが部長の腕の見せどころなんだと、俺は思っている。


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